0:飲食店の入り口から店内に入る佐藤。
店員「いらっしゃいませ!1名様ですか?」
0:頷く佐藤。店員は店を見渡して申し訳なさそうな顔をする。
店員「申し訳ありません、只今満席になっておりまして、相席でしたらご案内できます」
佐藤「アッ…ハイ…じゃあそれで」
0:席に案内されると、目の前にとまよこがいる。とまよこは定食を食べている。
佐藤「りゃんさん?」
0:名前を呼ばれて顔を上げるとまよこ。
とまよこ「…おおーお久しぶりです」
0:席に着く佐藤。
佐藤「ゴメンね、すっかり連絡しなくなっちゃって。元気してた?」
とまよこ「はい。お陰様で小さい会社ですが就職できました」
佐藤「おぉ~!! 良かったじゃ~ん!! やっと体調戻ってきたんだね~!!」
とまよこ「障害者にも割と理解ある会社で良かったです。美味しい食堂も近いし…」
佐藤「私もここ、気に入ってるんだ。無添加で体に優しいよね」
0:メニューを見る佐藤を見るとまよこ。
とまよこ「僕がいること知ってて入ってきたんですか?」
佐藤「え?」
とまよこ「なんて、冗談です。あ、どうぞ注文してください」
0:店の外に二人で出る。
店員「ありがとうございましたー」
佐藤「とまよこさん、用事あるんでしょ?別について来なくていいよ」
とまよこ「用事なんてどうでもいいですよ。せっかくだからもっと話しましょうよ」
0:佐藤、困った顔をする。
佐藤「ごめん、私は用事あるから、またね」
とまよこ「待って、莉央さん」
0:手を掴むとまよこ。
とまよこ「莉央さんさえ良かったら、また連絡してほしいです。僕、ずっと待ってるので」
0:佐藤、複雑な顔をして手を振って去る。それを見送るとまよこの背中。
0:佐藤のマンション。お風呂から上がり、LINEの画面を開くと、とまよこの欄が「このユーザー名は削除されました」と表示されている
佐藤(もしかして…ブロックされてる?)
佐藤「『いつまでも待つ』って言ったくせに、ヘンな人だなぁ」
0:弟が入ってくる。
弟「姉ちゃん、ご飯まだ?」
佐藤「!あ、うん。今行く」
0:佐藤、慌てて立ち上がる。
0:リビングには弟、妹、父、母が。
母「ほらっ、なにぼさっとしてるの。私明日も仕事なんだから」
佐藤「私だって仕事なんだけど…」
母「あなたはまだ若いじゃないの!それにすぐそこなんだから通勤時間もないし。まったく、誰が生活費稼いでると思ってるのよ」
妹「お姉ちゃん、私冷めたご飯嫌だって言ってるよね。つぎ直して!」
佐藤「はいはい…」
0:新聞を読む父。
0:佐藤家遠景。
0:保育所。赤ちゃんが泣き出す。それをあやす佐藤。
佐藤「うんうん、怖かったね」
子供「せんせぇ、かんなちゃんがトランポリンどいてくれないの!」
子供2「ねぇなんでぶつのー!?」
子供3「おかあさぁぁあああん!!!」
0:夕方。保育所外。
保育士1「お疲れー」
保育士2「お疲れ様です」
佐藤「おつかれさまでーす」
保育士1「あの…佐藤さん」
0:振り向く佐藤。
保育士1「今日飲みに行きませんか?2人で」
佐藤「えっと…ご、ごめんなさい」
保育士1「いや、これはデートとかじゃなくて、コミュニケーションのひとつです。佐藤さんすぐ帰っちゃうし、もっと仲良くなりたいと思って。ね? 奢りますよ~!」
0:過去回想。高校の頃など(小学校でも可)。
女子「ちょっと美人だからって、自意識過剰すぎじゃないの」
男子「お高くとまってんじゃねえよ、ブス!」
0:回想終わり
佐藤「あ…えっと…い、1回だけなら」
保育士1「本当ですか!?嬉しいな。じゃあ、行こう!」
0:手を掴まれて引っ張られる佐藤。
0:佐藤は青い顔をしている。
0:着いたのは高級寿司屋。寿司屋の前にいる二人。
佐藤「えっ、ここですか?」
保育士1「はい。すごくウマいっすよ」
佐藤「でも、すごく高いですよね…」
保育士1「大丈夫、全部奢りますんで」
佐藤「こういう所は入れません。奢っていただくのもやめて下さい」
保育士1「なんでだよ? いつもニコニコしてんのに、なんで俺の前でだけそんな怒るワケ? 不公平じゃん」
佐藤「あなたは幼児じゃない! 保育士でしょう!?」
0:大きな声を出す佐藤。
保育士1「一回だけで良いから飲もうよ!」
0:腕を掴まれ、無理矢理連れ込まれそうになる佐藤。
佐藤「困ります! 私、何も食べません!」
とまよこ「あれ、佐藤さん。こんばんは。何してるんですか、こんな所で」
佐藤「とまよこさん」
とまよこ「あ、デートですか? すみません、邪魔しちゃって。それにしてもいいお店行ってるんですね。お寿司お好きなんですか?」
佐藤「いや、そうじゃなくて」
0:保育士1がとまよこを睨みつける。
とまよこ「確かに佐藤さんの好みじゃありませんねえ。佐藤さん、ベジタリアンですし」
保育士1「えっ?」
とまよこ「あれ?ご存じないんですか?彼氏さんなのに…ああ、彼氏じゃないのか。佐藤さん、また変な男に言い寄られてるんですね。ご苦労様です。予約してあるのに入らないんなら、代わりに僕が入ってもいいですか?一度食べてみたかったんですよね。莉央さん、僕となら入ってくれます?」
0:保育士1ととまよこを見比べる佐藤。おずおずととまよこの隣に並ぶ。
保育士1「ちっ、ブスが」
0:去る保育士1。
とまよこ「…僕、すごく余計な事しましたね…本当にすみません。職場の方ですか?」
佐藤「そうだけど」
とまよこ「明日から職場が気まずくなるやつじゃないですか。ベジタリアンとか変な噓ついちゃったし…やだなぁ」
佐藤「ふふふ…」
とまよこ「なんで笑うんです?」
佐藤「だって…自分が出勤するみたいに言うから」
とまよこ「…僕、こんな高い店入れません。せいぜい卵焼きくらいしか食べられません。当然莉央さんを奢ったりすることも出来ないです。だからもう、帰ります。この間はごめんなさい、へんな事言いました。忘れてください。じゃあ…」
佐藤「待ってよ」
0:とまよこの腕をつかむ佐藤。
とまよこ「何か?」
佐藤「私が奢るよ」
とまよこ「いえ、お気になさらず。ただでさえ僕はあなた方の納めた税金を使わせてもらってる身ですので。僕に奢るなら税金納めてください。ではまた機会があれば」
佐藤「私、好きなの。ずっと前から! りゃんさんの事!」
とまよこ「…は?」
佐藤「高校の入学式から気になってたの! あの、正直言ってタイプです。さっき助けてくれた時もカッコよかった…から…あの…ご、ごめんなさい。急に変なこと言って。困る、よね」
0:手を離す佐藤。
0:しばらく沈黙。
とまよこ「…実は。大通りから着けてて。莉央さんが男と二人きりで歩いてて。居てもたってもいられなくなって。実を言うとこの町に就職したのも、あなたに会えるかもっていう下心があって」
佐藤「下心って?」
とまよこ「…莉央さんと二人で…飲みに行ったりしたいです」
0:目を合わせずに口をとがらせるとまよこ。
佐藤「良いですよ」
とまよこ「えっ」
佐藤「何回でも行きますよ」
0:顔がほころぶとまよこ。
佐藤「りゃんさん、顔真っ赤」
0:店の中に入る2人。
<end>