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(どこから現れた?)

 この女は、俺より#上手__うわて__#かもしれない。

 その可能性も当然考えての行動ではあったが、目が冴えるような感覚があった。

 女は矛を手に、驚いたような表情を浮かべている。漆黒の長い髪は、なるほど魔女のようだと思わないでもなかった。

 想像していたよりずっと若い。エルフかと思ったが違う。荷物を持っていないので、おそらく彼女が魔女で間違いないだろう。休憩中の冒険者という可能性もあるが、冒険者はたいてい神殿で薬草を買うので顔は覚えている。肩がこわばり、緊張しているらしい。

 俺は彼女を刺激しないように、温かな口調で言った。

「初めまして。私はクロス。ケソアッソーリの神官です」

 返事がない。彼女はいまだ、俺の顔を見て茫然としたままだ。

「あなたが引っ越したことを聞いて、ご挨拶に」

「挨拶?」はっとしたように彼女が答えた。

「もしよろしければ、あなたの事を少し教えていただけませんか? 危害を加えるつもりはありません。私一人でやって来ました」

 彼女はすっと矛を下ろす。警戒は解いてもらえたようだ。

「クロス様。失礼な行動をお詫びいたします。私の名はアデリア。この森に住むこととなりました、魔女でございます」

 まさかのカーテシーをする魔女。その姿はどこかの貴族令嬢かと思うほど様になっていた。とても礼儀正しい。正しすぎる。こんなにあっさり行くとは思っていなかった。

「まさかあなた様だとは思わなかったものですから」

 彼女はそう言葉を続けた。

「私のことをご存知でしたか」

「勿論。クロス神父は私の最大の推し…じゃなくて、お得意様になりそうでしたので」

 しかも、商売の話題まで向こうから振ってくるという又とない好機。

 俺は営業スマイルで返事をした。

「それはありがたい。どうかこれから、よろしくお願いしますね」

 その笑顔が彼女のハートを射抜いていたとは、この時は露ほども分からなかった。