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 アデリアは、強かった。

 見たこともない範囲攻撃を使い、俺が五回くらい攻撃しなければ倒せないダンジョンモンスターをいともたやすく屠る。戦えば負けるかもしれないと思った。ぶるりと震える。

 途中、「この頬肉が美味しいんです」とか、「この鱗が使えるんです」という説明を受けながら我々は進んでいった。何に使うのかは聞かないでおこう。

「ここがシアル草の群生地です」

 毒消しの薬草は、毒に強い植物から作る。おのずと群生するのは、毒に汚染された場所になりがちだ。あまり来たいと思う場所ではないし、さっさと採集して帰ろう。

「まぁ、こんなにたくさん生えているのを見たのは初めてですわ。このダンジョンは素材の宝庫ですね」

 目をきらきらさせて、アデリアが言う。片手には血みどろの、剝いだばかりの毛皮を持っているが。

「色々教えてくださって感謝しますわ。私たちは同じ商売をする仲間ですものね」

 そのとき、自分の背筋が凍るのが分かった。

 彼女は薬を作れる。売れる。

 俺がいなくなれば、彼女はこの町で唯一の薬師になれる。

 しかもここは洞窟のなか。神力も使えない神官など、彼女にはひとひねりだろう。

「このダンジョンは、あなたが私を始末するのに絶好の場所ですね」

 思わず声が、震える。

(もしかしたら、同業者の出現で浮かれていたのかもしれない)

 油断はならない。ダンジョンから出られるまで、彼女から目を離してはならない。

 彼女は丁寧に薬箱に薬草をしまうと、じりじりと詰め寄ってきた。背後は壁。人形のような顔が目と鼻の先まで来る。胸を押し当てられながらアメジストブルーの瞳に射抜かれ、身動きがとれない。緊張で汗がつたった。

「まあ、想像力たくましいですこと」

 俺の手を取りクスクスと笑う様子は、さすがに魔女だった。